板金屋稼業は特殊?

この業界に入る前にいくつかの他の業種で働いてきたこともあり、改めて比較して見てみますと、この業界は非常に特殊と言わざるを得ません。

同じ板金塗装屋でも、ディーラーやモータースなどの下請け専門会社と、一般消費者がお客様である直需と、その2つが混じっているハイブリッド型の合計3種類あります。

明確にはハイブリッド型が最近は多いように思いますが、未だにその比率は下請けがほぼ100%に近いとかそんな会社はザラにあります。

得てして下請け100%又はそれに近い会社は、とにかく感じが悪いです。マナーがなってない。一般のお客様と触れ合う機会や経験が他業種に比べ圧倒的に少ないから、そもそもコミュニケーションが下手な人が多いです。客商売と全く思っていないのでは?とお見受けする人たちも未だに沢山います。

なぜそうなったのか?と言いますと、今から30~40年前は、車の修理の仕事なんて、選ばなければいくらでも取れる時代があったからなんですね。仕事が切れることはあり得ない、そもそも仕事をいただいているなんて気持ちじゃなくて、やってやっている的な感じだったわけなんですね。その名残が残っていて、とにかく横柄な人がいまだに多いんですね。

しかし、その横柄な人々も殿様商売を続けられる時代は終わりを迎えました。仕事が切れることはまず無いだろうと思っていた人も、車のメーカー自体も以前のような強気相場では無くなり、関連会社・子会社の生き残りの前に自身の生き残りを賭けてコストカット、方針変換をしている時代です。生ぬるい親会社子会社(孫会社)の関係は見直されていきます。

すると、この業界特有の言葉で「レス」というのがあるのですが、この「レス」とは親会社の取り分のことを言いまして、例えばレス20%で親会社子会社の関係で板金修理の取引が成り立っていた場合、お客様つまりエンドユーザーに10万円の請求をする仕事であれば、8万円は子会社である板金屋、2万円は親会社に入るという仕組みなんですね。

業界的にレスが20%であれば、板金屋さんはニコニコで食っていけます!

レス20%取られても、一切営業しなくてもいいし、エンドユーザーとやり取りもしなくてもいいわけだから、ある意味全然楽なんですね。ただ目の前の車を板金塗装修理すればよい、それだけに集中できるんですよね。

しかし業界全体の勢力図が変わってきて、川上である親会社の全体的なパイの成長に陰りが見えてきた昨今、親会社は禁断の行動に出るのです。

それは、「レス率のアップ」です!

つまり、親会社が子会社の取り分を減らすということです。

レス率が5%アップということは、20%→25%になるということです。

で多くの親会社からの打診に、子会社はどう対応したか?

ほとんどの会社はその条件を飲みました。

ではなぜ飲んだのか?

仕事を切られること、無くなることがとても怖かったからです。

何十年にも渡り、一般顧客に営業を掛けたことの無い会社が、いくら納得しえない条件であったとしても、いきなり今までの仕事が無くなって、明日から一般顧客に営業をかけて会社を経営していこうなんて考えただけでも寒気がします。

とても一般客に営業を掛けていくスキルはない、既に下請けしか出来ない骨抜き体質にすっかり成り下がっていたのです。

しかし、当初はこの5%レスは飲めました。

それほど以前の板金屋は儲かっていたのです!

だから5%レスが増えたとしても、今までが十分儲かりすぎていたと捉えるなら、今までがむしろ問題で、このレスアップ分は受けなくてはならないみたいな空気が業界にもあったと思います。

しかししかし、レス率のアップはこれにとどまらなかったのです!!!

25%が30%に、30%を飲むと、そのうち35%を親会社が苦しいことと、仕事を切られたら困るだろ?的な足元を見られて要求を泣く泣くのんでしまう会社が続出したのです。

するとどうなったでしょうか?

まさにいくら働いても全然儲からない、「利益なき繁忙経営」状態に突入したのです!

めっちゃくっちゃ忙しい、朝から晩まで働いているのですが、全然利益が出ない。しかし、仕事を捌かなければ生きていけない、、、そんなモードに陥ってしまっています。

まさに生殺し状態ですね。

そんな会社が、さすがにこのままではまずいと思って、少しでも直需にも対応しようと思っても、元々コミュニケーションが激ヘタの人達ですから、今度は一般のお客様もいきづらいわけです。そもそも車の修理を一般人が依頼していいものかどうかさえ分からない修理工場がまだまだ沢山あります。

そこでしか直せない車じゃあるまいし、そんなよくわからない、コミュニケーションが普通じゃない会社に、今のインターネット社会の人々は勇んで車の修理を依頼しません。

このような業界構造になり、下請け率が高い会社のトップは常に不平不満が溜まりまくっています。

しかし、そんなことは一般のお客様にはどうでもいいこと、気持ちよく感じよく、あなたのフィーリングにあう板金修理屋さんに出会えばいいのです。

ですので、一つの指標としてあまり下請け依存していなさそうな会社を選ぶのが、いい板金屋を選ぶ基準とも言えるのです。